手塚治虫の「アドルフに告ぐ」を読んでみた。「はだしのゲン」みたいな第二次大戦モノなのにアメリカが全然出てこない。
新しいコミックも良いけど、たまには古典的な漫画でも読んでみるかと図書館にあったので全4巻を貸出。
最初は主人公がコロコロ変わるのは、あんまり好みじゃないな~と思いながら読んでいたら、途中からグイグイと引き込まれて全4巻を一気読み!
平日の夜中1時半までかかったけど、面白かった。
どんな話か全く予備知識がないまま読んでみたけど「はだしのゲン」みたいな第二次大戦を舞台にした物語だった。
なのにアメリカが全然出てこなくて、ナチス・ドイツ(ヒットラー)・ユダヤ人・日本がメインテーマ。
メインの登場人物
1, アドルフ・ヒットラー
2, 後にナチス軍人となるドイツ人ハーフのアドルフ・カウフマン
3, 日本に亡命してきたパン屋の息子で、関西弁のアドルフ・カミル(二人は幼馴染)
4, 狂言回し役の日本人記者、峠(とうげ)草平(そうへい)
この4人が入れ代わり立ち代わりシーンを切り替えて、ヒットラーがユダヤ人の血を引く出生証明書(フィクション設定)を巡って、ドッタンバッタン大騒ぎする話です。
一番インパクトがあったのは、ユダヤ人差別をするナチス軍人にはなりたくな~いと大騒ぎしながら、しっかりとナチス軍人になってユダヤ人を虐殺しまくっているアドルフ・カウフマンかな。
次点で、タフネスすぎる記者の峠(とうげ)、特高やナチスと言った権力に絶対屈しない!個人で戦う!という一歩間違えると狂気じみた行動原理が主人公っぽい。
満州での日本軍の非道を目の前で見て、反戦活動のために日本軍の情報をソ連に流す大佐の息子とかも印象に残った。
「人は時代の子」とは、よく言ったものだ。
ラストの展開は唐突に時が流れて、イスラエル・パレスチナの領土争いが舞台(何百年も住んでいたアラブ人 vs もっと大昔は俺らが住んでいたユダヤ人)
ナチの残党刈りから逃れて流れ着いたアドルフ・カウフマンはともかく、パン屋の息子のアドルフ・カミルがイスラエル軍人になってるのは違和感があった。普通に生まれ育った日本で暮らすのはダメだったの?
人種差別や民族紛争とかは、日本人的には「対岸の火事」なイメージだけど、やはり経済的に困窮してくると、こういった問題が表面化してくるのかな?
でも、日本のイジメとかは経済的な問題でもないから、そもそも人間というのは「少数派や弱者をいたぶって自分たちの優位性を確認したい」という悪癖があるのか?
あと読んでいて思ったのは、タイトルは「3人のアドルフ」の方がしっくり来るな。
手塚治虫といえば、ブラックジャックや火の鳥も良いけど、こういったガチで大人向けの奴も面白い!
この作品は、子供よりも大人になってからの方が面白いと思う。特に後半の峠(とうげ)への感情移入は10代には難しそう。